翻訳事例>>Eating oil
石油を食べる
(翻訳:大田芳道)
(注:アンドリュー・デウィット(Andrew DeWit)氏は立教大学の経済学助教授であって、「ジャパン・フォーカス」(Japan Focus: http://japanfocus.org/index.asp) のコーデイネーターである。この論文は同氏がジャパン・フォーカスのために執筆したもの。2005年9月20日に掲載。著者の許可を得て、訳文を本ホームページに掲載。著者への電子メールは下記へ:dewit@rikkyo.ne.jp)
食物と石油とはどのように関連し合っているのだろうか?これらふたつの事柄は、実は、かなり緊密に絡み合っている。一例を挙げると、石油は肥料を生産する ために使用され、農業機械の燃料としても使われ、プラスチック製のラッピングや梱包材料として、あるいは、食料品の運搬にも用いられる。我々は、文字通 り、いや、そればかりではなく、比喩的に言っても石油を食べて生きているのだ。毎日食べる食物はその1カロリー毎に、多分、その10倍以上のカロリー量に 匹敵するエネルギーを食物の生産のために消費している。
日本は自国民が食べる食料の40%を自給するだけである。国連のFAO(食糧農業機構)によると、その自給率はOECD(経済協力開発機構)加盟諸国の 29カ国中で28番目である[訳注:最後の29番目はアイスランド。お隣の韓国やヨーロッパではオランダも低い]。これと比較して、英国の食料自給率は 74%、ドイツは96%、アメリカは125%、そしてフランスは132%である。そればかりではなく、FAOのデータによると、日本の自給率は60%で あった1970年から現在のレベルにまで下がって、今もなお低下し続けている。これとは対照的に、英国は1970年には46%の自給率であったが、今や全 消費量の3/4を賄うレベルにまで回復した。ドイツは1970年には68%と比較的低いレベルにあったが、殆ど自給できるまでに回復している。これらの データは日本の戦後の農業政策が大失敗したことを端的に物語っている。日本では米の自給率は100%であるが、小麦はたったの14%、大豆は6%、野菜は 82%、果物は44%、肉は54%、魚介類は57%である。
上述したように、日本の消費者は正に「大量の石油を食べている」のだ。国内で大量の輸送が行われているばかりではなく、年間6,000万トンもの食料が遠 い生産地から運び込まれてくる。例えば、北米からは穀物や果物、オーストラリアからは牛肉。ところが、日本人の食料に対する関心は、今までのところ、どれ ほどの量の食品が廃棄されたのかという点や放出される温室効果ガスが環境に与える影響のみに集中されている。例えば、日本政府の試算によると、2002年 度には人口1人当たり725キロカロリーの食品が毎日無駄に廃棄された。全国レベルで見ると、これは合計では約11兆円となり、日本の2005年度の防衛 予算の2倍強に相当する。決して取るに足りない金額ではない。2001年に施行された「食品リサイクル法」によって、食品関連企業は2006年度までに現 行の食品の廃棄量の20%を削減するよう求められている。
この法律により食品の廃棄に焦点をあてたことは、日本の食糧生産や輸送に消費される化石燃料の問題から日本人の関心を奪ってしまう。「英国安全同盟」(UK Safe Alliance)は1994年に「フード・マイル報告書」(Food Miles Report) を発表したが、その後、英国はエネルギーの使用ならびに食料輸送に関する研究では世界でも第一人者となった。この報告書に鼓舞されて実施された研究の成果 を見ると、その幾つかは驚異でさえある。2001年に「石油を食べる」と題した報告書を作成し、それを世に出した英国の組織「サステイン」 (Sustain、[訳注:「持続する」の意])によると、ロサンジェルスから英国へ空路輸送されるレタスはその各々の1カロリー毎に127カロリーの燃 料を消費する(www.sustainweb.org/pdf/eatoil_sumary.PDF)。 結局、本質的には水といってもいいような農産物を遠隔地から空路で輸送すると、膨大な量の石油が無駄に消費される。日本はこれらのデータの作成を怠ってい るが、そういった状況にあるのは日本ばかりではない。しかし、日本の場合、その程度を見ると由々しき状況にあることは確かだ。
フードマイレージ
食料輸送の度合いは「フードマイレージ」として算出することができ、これは輸送距離に輸送した食糧の重量を掛け合わせることによって得られる。フードマイ レージの値が大きければ大きいほど、その国の化石燃料に対する依存度が増大し、全世界の環境に対しては負荷が高まる。石油が安かった頃は、これらの負荷は 外界的存在であって、完全に無視することができた。しかし、コストが大きくなり、その存在がより以上に明白になってくると、頻繁にフードマイレージについ ての質問が寄せられるようになり、食料消費の形態を決める諸々のエネルギーに関する課題も同時に質問の対象となるに至った。
日本の2001年のフードマイレージは9000億トン・キロメートルと巨大である。これは米国のそれの3倍強である。だが、人口一人当たりの数値を見る と、さらに驚異的である。日本の一人の消費者は年間7,093トン・キロメートルの食品を消費し、米国のそれは1,051トン・キロメートルにとどまって いる。日本と同様に島国である英国でさえも、一人当たりの数値は3,195トン・キロメートルである。
二酸化炭素のコストについて検討してみよう。我々の直感的な考えによると、二酸化炭素問題の中心は自動車にある。多分、これは米国のせいである。米国は全 世界の人口の4%を占めるだけでありながらも、二酸化炭素の総放出量の25%を占めており、しかも米国には汚染物質を大気に放出し放題の車両が沢山ある。 そのような米国においてでさえも、車両からの放出は総放出量の20%を占めるに過ぎない。ここで、英国の報告書、「石油を食べる」を覗いてみると、その答 えが見出される。二酸化炭素を生成する最大の犯人は必ずしもファミリーカーではない。英国では、「食料システムこそが気候変動に貢献する最も重要なファク ターである。典型的な英国の家庭は4人で構成され、毎年、個々の家庭からは4.2トンの二酸化炭素を放出し、自動車からは4.4トン、そして、彼らが消費 する食料の生産、精製、梱包、流通からは8トンが放出される。」 日本に関する同様のデータを入手することはできないが、多分、その全体の傾向は英国のそ れと同様であろう。しかし、何らかの違いがあるとすれば、それは日本の家庭や自動車からの放出量は英国のそれよりも低く、日本の異常に高いフードマイレー ジの数値から推測できることは、より大量の二酸化炭素を放出することによって大量の食品が日本の家庭の食卓に届けられているという点であろう。
食料の自給自足に向けての日本の動きは日本のフードマイレージ問題の解決にはならないと思われる。食品輸入を完全になくすことは到底出来そうにもなく、数 多くの種類の商品穀物についてそれらを自給自足としなければならないかどうかは必ずしも明確ではない。何れにせよ、食料の自給率を高めること自体は日本に とっては理に適った目標ではある。他の国々は自国の食料安保の観点から、もしくは、他の理由から自給率を高めている。また、たとえフードマイレージの数値 を低下させたとしても、あるいは、「地産地消」運動に見られるようなブームが日本で起こっているとしても、自国の市場内には依然として長距離の食料輸送が 残る。国内輸送で消費される化石燃料 - それによって放出される大気汚染 - は、一般的に言って、航空輸送に代わって、可能な限り鉄道輸送や水上輸送 あるいは道路輸送を使用することにより大幅に低下させることができる。海上輸送はエネルギー的に効率が高いと見られてはいるが、通常、海上輸送は非常に長 い距離の場合に使用され、最も汚い燃料を使うことにもなる。例えば、大型のバラ積み貨物船は12,000台の乗用車に匹敵する大気汚染をもたらす。
勿論、状況を市場に委ねることが一般的に言っても責任感があり、かつ、現実的な筋道であるとする現在の時代性においては、日本で農業の自給自足を推進する 必要性を説くことは冷笑を誘うことになるかも知れない。あるいは、あからさまに非難されることになるかも知れない。
農業の自給自足を促進することは、一般論的にはそれはさらに多くの政府補助金を必要とする結果を招き、自由市場よりも高い末端価格を必要とすることにもな り、特に、浪費を伴うことからも的を射たものではないと判断されるのが落ちである。しかしながら、ピーク・オイルの明白な脅威を見ると、上昇の一途を辿る 原油価格が国内での食料生産を今まで以上に魅力的にすることができるのかどうかについて情勢を見極めようとする、どっちつかずの態度は決して賢明ではない だろう。2001年に、日本政府は国内の異常気象、海外での農産物の不作、地球の温暖化による食料生産の低迷、あるいは、地域紛争による世界貿易の断絶と いった状況を想定した「不測時の食料安全保障マニュアル」を作成した。このマニュアルは、実質的に、ジャガイモや他の根茎菜をどこにでも栽培し、それらを 米作の代わりにさえも位置づけるべきだと忠告している。確かに、現行の危機をうまく使って、原油を節約し、持続可能な農業セクターを創設することが賢明で ある。
情報源:
Oil and Peak Oil
1. The Oil Drum is a regularly updated blog, managed by academics in the energy field and the social sciences.
2. The Energy Bulletin is a regularly updated index of articles, sorted into a wide range of useful categories.
3. Matthew Simmons, Chairman of Simmons International, uploads his presentations here.
Food Mileage
4. The UK Food Miles site is managed by Sustain: The alliance for better food and farming.
5. The BBC introduction to food miles.
6. A new Japanese site on food mileage and CO2 emissions.
(This site is run by the "Daichi wo mamoru kai" or "Association for the Protection of the Earth.")
7. Notes on Japan's food mileage in English can be found in a translation of the Environment Ministry's 2003 report.
8. The page issued by the Japanese government on the "local production, local consumption" movement

